「今年で50才のエスロクです!」 高橋在錫
 
 皆さんにはお気に入りの車がありますか。思い出の一台がありますか。この春私の特別な一台が仕上がったので紹介します。
 
 ちょうど50年前、私が15の時に生まれて初めて運転した、そう、無免許でこっそり運転した車がこのホンダS600でした。それから時は流れて40年後の、つまり今から10年前、またこの懐かしい車に出会ったのです。
 
 知り合いのディーラーさんのもとに現れました。廃車になる予定でしたから内装も外装もぼろぼろ。山間部などに放置されて錆びて朽ちた車を見たことがあるでしょう。
 
 あのくらいを思い浮かべてもらうとちょうどいいです。とても普通に走られる状態ではありませんでした。それでも私もくるま屋。なんとかなるさと譲ってもらいました。
 
 10年かかりました。部品は純正にこだわり、もちろん新品など無いですから、中古部品をインターネットで探しました。クーペタイプでもともと生産が少なかったので何年もかかって見つけた部品ばかりです。
 
 そうしてこの春やっと完成したのです。合わせたように徳島工業短大の自動車学科からお声がかかりクラシックカーフェスティバルに出展をしたところ、ホンダカーズ賞を頂きました。
 
 乗り心地。それはもう最悪です。とにかく狭すぎます。膝と腹と胸がくっつきます。こないだは思わずアクセルとブレーキを同時に踏んでしまいました。ハンドルは重たく、当然エアコンはなくシートベルトもない。乗ると疲れます。でもそれがいいのです。
 
だってクラシックカーなのですから。
 
 今は若かった頃を懐かしみながら、そして自動車業界の著しい進歩を実感しながら免許証を携えて走っております。手入れをして大事に長く乗ってやろうと思っています。老後の楽しみがまた一つ増えました。